スゲイノウ人森さんとの対談・第28回です。 今回のテーマは「磨く」。なんともぼんやりとしたテーマですが、森さんが磨くを語ると、まあいろいろ出てくる。 普通の生活をしていると、なかなか出会わないニッチな磨きの世界をご紹介します。 スゲイノウ人の森って誰それ!?という方はこちらからご覧ください↓ 【万年筆が好きすぎるシステムエンジニア 】第1回 SEと万年筆との出会い 森さん仕上げのカスタムヘイテイジ92はこちらです。

こんにちは〜!編集のSです。


今日は何について語ってもらいましょうか!


なんと!!うーん、これは本業を持ちつつ得意技を活かしてる「スゲイノウ人」ならではのお悩みですね。


「磨く」ですか!確かにフワッとしてますね。ひとくちに「磨く」と言っても、広〜いですよね。


さすがスゲイノウ人のDNA!水道の蛇口って、カルキ?の成分で白っぽく曇ったり、普通に洗ってもなかなか落ちなくて大変だと思いますが、よくピカピカになりましたね。

娘はメラミンスポンジを使ったようです。

あ〜、あれ便利ですよね。消しゴムのようによく落ちる!

そうなんです、よく落ちるんですが、使う場所には注意が必要です。「磨く」と「削る」は定義の仕方によっては同じになるかもしれませんから。

おっと、そうか。モノによっては傷ついちゃったりするんですね…。


なるほど、質感ですか!磨くって深いな〜。

実はこのJally’sの記事にも、なんと三種類の「磨き」が出てきています!

え、あれ、そうでしたっけ?

「バレル研磨」「電解研磨」「バフ研磨」ですよ。忘れちゃいました?

ええと、ちょっと過去記事を見返しております。ああ、ありました!バレル研磨は洗濯機のようなガラガラ回す、あれですよね?

そうそう。メディアと言われる研磨材(石や木など様々)とワーク(対象物)

おお〜、汎用性高い〜!野菜の皮むきとか、これでやりたい(笑)

わ、どんな家庭ですか(笑)ただデメリットもありますよ。タンク内で複数のワークが擦れ合ってるので製品表面に細かいキズや

素材や形状に合わせて使うことが大事なんですね。

そういうことです。

お次の電解研磨は、溶かすんでしたよね?

うん、まあ正解。形状がデコボコして通常の磨きが難しいものが対象です。電解研磨溶液(金属によって違う)の中で、その金属をプラスとして直流電流を流すと、金属の溶解とともにその金属表面が平滑化します。物質同士がぶつかり合うことがないので、ムラなくクリーンに平滑化できます。

なるほど。電解研磨は、削るではなく、溶かすですね。

最後はバフ研磨ですね。バフ研磨は一般的な「磨く」のイメージに一番近いかもしれません。バフとよばれるふわふわの生地を回転させて磨く方法で、仕上げ段階で使われる事が多いです。バレル研磨で下地を作って、バフで仕上げる事もよくあります。鏡面などにする場合は、コレだけど作業する人の技術に依存しちゃう部分があるかな。

それぞれの研磨手法は、併用されることが多いんですね!そして、誰がやっても品質が変わらないバレル研磨や電解研磨と違って、職人の技が試されるのがバフ研磨!

実は、バフ研磨以上に職人技の世界がありまして、先日それを見てきたんですよ〜。

お、また工場見学に行かれたんですか?

工場はさすがに難しい。なので、セイコーミュージアムにお邪魔して見てきました。ザラツ研磨の美しい仕上がりを!

え、なんでまたセイコー?そしてザラツってなんですか??ザラっとしてそう…。

グランドセイコーというセイコーの高級腕時計のシリーズがありまして、そのケースの美しさに魅せられ、ついにセイコーミュージアムまで足を運んだというわけです。


ええ、なんですか?ザラツ研磨ってそんなにすごいんですか?

「ザラツ研磨」というのは通称で、スイスのザラツ兄弟社の研磨機を使った工程そのものをいつしか「ザラツ研磨」と呼ぶようになったようです。やってることは回転金属板のついた平面研磨機で職人がひとつひとつ磨いている、ただそれだけです。

え、そうなんですか?

平面研磨機での磨きは、時計の本場スイスでも今はほとんど行われておらず、セイコー独自とも言えます。
通常ならバフ研磨で仕上げるところですが、バフ研磨だとどうしても柔らかい仕上がりになってしまうため、平面研磨機を使って、エッジの効いたシャープな印象を出しているそうです。
平面研磨機で歪みのない美しい鏡面を生み出すことは、確かに高い技術力と経験が必要でしょうが、この作業を「ザラツ研磨」と呼び、すごい職人技であると敢えて打ち出すことで、セイコーのブランドイメージを上げているとも思えます。

よくある「職人が丁寧に磨きました」に「ザラツ研磨」

実際にすごいですよ。見てください、この歪みのなさ。それに加えて、ブランディング上手なSEIKOさんです。


それを見るためにわざわざ足を運ばれたんですね。

グランドセイコー好きだし(欲しいし)、高い技術であることは確かなので、何かに活かしたい!技を盗みたい(物騒)と思って動いておりますゆえ。

なんともスゲイノウ人らしいです。

いや〜、それほどでも〜。

ああ、森さんも「しんちゃん」ですね(笑)

今週はすごいフワッとした話になっちゃいましたが、こんなんで大丈夫ですか?

いえいえ、いつもながらスゲイノウ人らしさが爆発していましたよ。この調子でニッチにいきましょう!
それでは、また来週〜。

さようなら〜。
セイコーミュージアムの模様を森さんが動画にしてくれました!よかったらご覧ください
セイコーミュージアムに行ってきました
平日の為かガラガラで貸し切り状態。😄そういえば「若者の時計離れ」みたいな記事を稀に見かけますが、あれ20年くらい前から言われてたような?🤔
2000年位にはもう皆携帯かPHS持っていたからかな?(PC、ネットはクラスでも少数でした)#SEIKO #腕時計 pic.twitter.com/yYClgyqEeN— 森慎吾@万年筆仕上げ人 (@Tech2501) November 29, 2019
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「万年筆が好きすぎるシステムエンジニア」森 慎吾さんのプロフィール
1981年生まれ。高校卒業→印刷会社→専門学校(音響芸術科)→テレビ局で編集マン→SE→フリーランスのSE→スゲイノウ人(イマココ!)。とにかくずっと激務に追われる日々からフリーランスへ転身し、忙しいながら趣味にあてられる時間も増え、万年筆カスタマイズに没頭の日々。