森さんが行う仕上げの中でも、大きな比重を占めるニブのメッキ作業。こだわりは、「バイカラー」ならぬ「トライカラー」。メーカーには煩雑すぎてできないことこそ、個人の強みですよね。 はじめてお越しの方はこちらもご覧ください↓ 【万年筆が好きすぎるシステムエンジニア 】第1回 SEと万年筆との出会い 森さん仕上げのカスタムヘイテイジ92はこちらです。

こんにちは〜。編集のSです。


先週は初のプレゼント企画を開催し、たくさんの方に応募していただいてます!ありがとうございます。
記念すべき50回目
編集さんと過去の記事を振り返りました。
プレゼント企画にと軍艦風万年筆をご指名頂いたので、見てくれている方への感謝の意味も込めて現品1本を抽選プレゼント致します☺️★応募方法
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5/20(水)締切#帝国海軍#万年筆 https://t.co/S7k61nK4f0— 森慎吾@万年筆仕上げ人 (@Tech2501) May 9, 2020


遊び心で作ったのが、逆によかったのでは?


それも森さんのいいところですよ。さてさて、50回という節目を無事迎えまして、


「そこまでやる?!」といえば、ニブのメッキのツイートを拝見して、相変わらず超細かい作業をされているなぁと感心しっぱなしです。
古い149のニブをトライカラー化したけど失敗…
外側「ロジウム」
中央「14K+梨地」
内側「ブラックロジウム」液浸メッキで曲線が多いマスクは境界がやっぱにじむ…
はみ出たロジウム部を削れば綺麗に揃うけれどある問題が発生する為やりたくない…orz pic.twitter.com/rCByBWOTLO— 森慎吾@万年筆仕上げ人 (@Tech2501) May 11, 2020


これはどなたかからの依頼品ですか?


ああ…あの時の…。

かなり苦戦しました…もうマスキングの限界ギリギリですね。

マスキングって筆でするんですね…。私なら手が震えて無理です(キリッ)

おばあちゃんですか…(苦笑)

いまさらですが、万年筆のニブがメッキで塗り分けされてるのって、少数派ですよね?

比較的高額帯の万年筆に限られますね。

高額っていうと?

1万円台でもありますが、2~3万あたりを境界に多くなる感じです 。

それくらい手間暇かかりますものね…。

それに、お手頃価格の万年筆に多い小さいサイズのニブだと、せっかくメッキで塗り分けしても「映え」ないんですよね。

確かに、今回メッキ作業していた、モンブランのマイスターシュテュック149のニブは大きいですよね。


そういえば、万年筆のニブはスチールニブでも金メッキされていたり、金ペンでもロジウムメッキされていて金色じゃないなど「紛らわしい!!」と思ったことがあります。

見た目で判断しちゃってますね~。ちゃんと素材を確認しないと痛い目にあいます。

い、いまではちゃんとわかりますよ。「1万円以下で金ペンはないやろ~」とか。
金の見た目が好き!でも安い方がいい!の要望にこたえてますよね。

スチールニブの硬めの書き味が好きな人もたくさんいらっしゃいますから、一概に値段の問題でもないんですよ。

ああ、そうか。見た目の好み、書き味、価格、様々な要素の組み合わせを網羅しているのですね。

そうそう。

逆に、18金や14金のニブをわざわざロジウムでメッキするのは、装飾の意味だけでなく、金の柔らかさゆえの磨耗を抑える役割があるんですよね?

うん。ロジウムは硬度が非常に高くて耐摩耗性に優れてるし、酸やアルカリにも侵されない。

はじめの塗り分けの話にもどるんですが、バイカラーの商品はあるにしても、森さんが挑戦した、トライカラーって商品としてあるんですか?

たぶんない。いや、ない。

面倒くさすぎるからとか?(笑)

うん、工数も工程も増える。メッキの工程の品質管理もシビアになるから歩留まりも低くなるのでは? つまり価格を上げざるを得ないし、上げてもそこに価値を見出す人は少ないから誰得?ってなっちゃう。

なるほど(苦笑)でも、そうなるとトライカラーのニブはかなり貴重なものになりますよね?

貴重というか珍しいとは思います。失敗しちゃったけど。

私にはどの辺が失敗なのか、イマイチわからないレベルですけど…。

え?そうなの?

失敗すると、どうなるんですか?ダメになるというより、初めからやりなおし?

失敗の仕方次第ですが。概ね下記3つ
①メッキを除去して最初から再メッキ→(わずかに地金が減る)
②軽く下地処理してそのまま上から再メッキ→ (地金は減らないが失敗し易くなる)
③メッキ手法を変える (あの手この手)

う〜ん、すべてがパァというワケではないですが、やり直しが精神的に地味にききますね。
では、失敗しやすい部分ってありますか?

ずばり複雑な曲線。自分は仕上がりの観点から浸浴タイプのメッキを多用してますが、僅かに水圧がかかる為、マスク境界が滲みやすい 。ペンメッキだと境界は綺麗にだせるけど、浸浴と比べるとメッキ膜の滑らかさ、平滑さで劣っちゃうんですよね。

なんかよくわからないけど、曲線が難しいというのはなんとなく納得できます!

まあ、そんなこんなで苦労するんですわ…。

メーカーでやれない部分というのが”ミソ”ですから、ぜひとも研究し続けてください、森特製トライカラーニブを!

また納得のいくものが完成したらご報告しますね。

急がせるわけではないですが、お待ちしております。
さて、今日はこのへんでシメましょうかね!

は〜、いろいろ動いてはいるのですが、まとまったお話できなくてスミマセン!

森さんのような、ちょっと(すごく)ヘンな人も常時募集しています。お気軽にお問い合わせフォームからメッセージください。

また来週お会いしましょう!

さようなら〜!
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「万年筆が好きすぎるシステムエンジニア」森 慎吾さんのプロフィール
1981年生まれ。高校卒業→印刷会社→専門学校(音響芸術科)→テレビ局で編集マン→SE→フリーランスのSE→スゲイノウ人(イマココ!)。とにかくずっと激務に追われる日々からフリーランスへ転身し、忙しいながら趣味にあてられる時間も増え、万年筆カスタマイズに没頭の日々。