~新品を超える究極の仕上げへの道~ vol.2
森慎吾さんの本業はシステムエンジニア。
趣味で万年筆を愛し、その愛は変態レベルにまで成長。
好きすぎて自ら万年筆のパーツをカスタマイズするスゲイノウ人です。

万年筆を、より美しい万年筆へ!
「究極の仕上げ」へのこだわりがたっぷり詰まった、森さんカスタム万年筆をJally’s Shopで販売することが決定し(近日発売予定です!)その製作記をシリーズでお送りしています。
前回は森さんが使っているこだわりのツールをご紹介いたしました。
◇第1回目の記事はこちら◇ 「カスタムヘリテイジ92」製作記 vol.1 こだわりのツール(道具)編
第2回目は「ベースメイク(下地)編」です。
「究極の仕上げ」には下地作りが不可欠

下地作りとは、新品で購入した万年筆を観察し、凹凸を除去し、後工程であるメッキが綺麗にのる状態にすること。
新品の万年筆のニブがそんなに傷ついているわけない!と思ってしまいますが、写真をみると、新品ながら細かいミクロの傷がいくつもあるのがわかる。(肉眼ではほとんど気にならない)
女性のベースメイクも似たようなものですね。いきなりファンデーションを塗るのではなく、下地乳液やプライマーなどを使うと、化粧のノリがよくなります。
下地の出来は、最終的な出来に直結する重要な部分なので、この工程に3〜4時間もかけるそうです。
メッキはがし

まずは、新品で買った万年筆のメッキを剥がすところから始まる。
いきなり施してあるメッキを剥がすんだから、はじめは少し勇気がいるのではなかろうか?
ここで失敗すると全てがパアですからね、慎重に作業します!
(実際パアにしたこともあるんですけど…)

最初にEVE社の”FINE”と”EX FINE”でゆっくり研磨
マイクログラインダーの先端工具を適宜使い分けての作業。これらの先端工具は他の工程も含めれば30以上も使い分ける。
EVE社はドイツのメーカー。EVE社製の先端工具は、価格と品質ともに評価が高く、世界のジュエリー業界で使われています。
最初のチェックで比較的深い傷があれば”ミディアム”から使う
深い傷といっても一般的な「傷」ではないけれど、FINEやEX FINEでは磨ききれない傷は、先端工具をミディアム(FINEやEX FINEよりも若干目が粗い)にするなどで対応。どの程度の傷ならばこの工具、という基準は全て自分の経験が頼りになる。
炭化タングステンでできた超硬ヘラでヘラがけ

ヘラがけって?
ヘラがけとは、金属に美しい輝きを出すにあたって欠かせない工程のひとつ。
上の写真のような「ヘラ」をニブに押し当てることで、金属の密度が上がり、微細な傷を埋めていくことができる。
そして最終的な仕上がりが変わる。ツヤに重厚さとなんとも言えない艶やかさがでるのだ。
失敗するとツヤが歪んでおかしくなる(失敗厳禁)
まあ、どの工程でも失敗できませんけどね!(苦笑)
必要があれば電解研磨も行う
電解研磨って?
電解研磨溶液(金属によって違う)の中で、その金属をプラスとして直流電流を流すと、金属の溶解とともにその金属表面が平滑化する。
カスタムヘリテイジ92では使用しないものの、エンボスが複雑な物には、この電解研磨という研磨の手法をとる。
バフ研磨の前に電解研磨をすると、電解研磨しない場合より綺麗に仕上がる
仕上げ研磨

バフとLUXORの研磨材を使用して仕上げていく。
艶の様子を見ながら3μ~0.1μの範囲の研磨材を使用して仕上げていく(ここで間違えて傷をつけると台無し)
疲れていたり、焦っていると、間違えることがありますね。
それはそれは、ひどく落ち込みます…
上記のようなベースを整える工程を経ることによって、究極仕上げの万年筆に近づきます!
カスタムの模様を動画でも公開中!ぜひご覧ください。
森さんの万年筆への偏愛ぶりについては、スゲイノウ人インタビュー記事も合わせてご覧ください。 【万年筆が好きすぎるシステムエンジニア】第1回 SEと万年筆との出会い 【万年筆が好きすぎるシステムエンジニア】第2回 万年筆カスタマイズの世界 【万年筆が好きすぎるシステムエンジニア】第3回 スゲイノウ人御用達!?のお店
「万年筆が好きすぎるシステムエンジニア」森 慎吾さん
1981年生まれ。高校卒業→印刷会社→専門学校(音響芸術科)→テレビ局で編集マン→SE→フリーランスのSE→スゲイノウ人(イマココ!)。とにかくずっと激務に追われる日々からフリーランスへ転身し、忙しいながら趣味にあてられる時間も増え、万年筆カスタマイズに没頭の日々。